会社設立・商業登記とは
「会社」は、普段からよく耳にする言葉でとても身近な存在だと思います。しかし、会社の「設立」方法や、「商業登記」という言葉に関しては、余りなじみがない方が多いのではないでしょうか。
一口に会社と言っても、株式会社や有限会社のほか、合名会社、合資会社、合同会社など色々な種類があります。また、日本を代表するような大企業の会社、地域に密着した会社、家族や親戚で経営している会社など、その規模も様々です。このように会社の形態は多種多様ですが、それらの全てが法務局に「設立」の登記申請を行うことによって、設立されます。そして、商号・本店所在地・目的・資本金の額・取締役の氏名など、会社の登記事項(情報)が登記事項証明書(商業登記簿)に登記(記録)されます。この登記事項証明書は、一つの会社につき一つ作成されます。会社が設立した後、登記事項に変更が生じたときにはその都度、管轄の法務局に変更の登記申請をしなければいけません。
会社の登記事項証明書は、法務局に行けば誰でも請求して見ることが出来ます。上記のように登記申請を義務付けて会社の基本的な情報を一般に公開することにより、会社の信用を維持し、安全な取引の円滑化を図ることが「商業登記」の目的となっています。
Q&A よくあるご相談内容
- 株式会社を作りたいのですが、どのくらいの費用がかかりますか。
- 株式会社は一人でも作ることができますか?
- 商号を決める時に何か気を付けないといけないことはありますか?
- 資本金の額はいくらにすればいいですか。
- 会社の目的はどのように決めたらいいのですか。
- 本店所在地の住所にはビル名や部屋の号室も入れないといけませんか。
- 定款とは何ですか。
- 役員の任期は何年にすればいいですか。
- 変更の登記をするのを忘れていました。何か罰則がありますか。
- 会社をたたみたいのですが、どのようにすればいいですか。
- 代表取締役を2人に増やしたいのですが、新たな代表取締役の印鑑を届け出る必要はありますか。
- 私は名前だけを貸して取締役になっています。このままでいいのでしょうか。
- 支店を作る予定です。登記する必要はありますか。
- 有限会社から株式会社への移行は必要でしょうか。
Q1.株式会社を作りたいのですが、どのくらいの費用がかかりますか。
必ずかかる費用として、公証役場での定款認証の費用として約5万円(電子認証の場合)、登記申請時の登録免許税約15万円。合計で20万円程度になります。司法書士に依頼される場合は、上記の実費に加えて報酬が掛かります。当事務所の報酬については10万円を基本料金としています。
Q2.株式会社は一人でも作ることができますか?
はい、作ることができます。設立に際し、発起人(設立後の株主)と取締役がそれぞれ1名ずつ必要ですが、これらは兼任することができます。
Q3.商号を決める時に何か気を付けないといけないことはありますか?
かつては、同一市区町村内での同一商号が禁止されていましたが、現在では同一地に同一商号でなければ原則として認められるようになりました。しかし、不正競争防止法により、他社の商号を使用して、他社の営業上の利益を侵害することがあれば、訴えられる可能性があります。したがって、既存の会社と誤認されないように、近辺の同一商号や類似している商号について事前に調査することが必要です。
Q4.資本金の額はいくらにすればいいですか。
資本金は1円以上であれば、いくらでも設定が可能です。ただ、資本金は社会的な信用の判断基準の一つとされているため、少額すぎると対外的に厳しい目で見られることもあるようです。また、許認可事業を行う場合には要件として一定の額以上の資本金が定められていることもありますので、注意する必要があります。
Q5.会社の目的はどのように決めたらいいのですか。
目的の数には制限がありません。また、実際に事業として行うものでなくても目的として記載することができます。したがって、これから行う予定の事業だけでなく、将来的に行いたい事業も入れておくと、後々の変更手続きの手間を省くことができます。しかし、あまり目的を列挙しすぎると本業として何を行っている会社なのかが客観的にわかりにくく、会社の強みをアピールしづらくなります。許認可事業を行う場合や、保険の加入の条件として指定の目的を入れておかなければいけないケースもありますので、注意が必要です。
Q6.本店所在地の住所にはビル名や部屋の号室も入れないといけませんか。
本店所在地は〇番〇号または〇番地まで記載すれば足りるので、ビル名や部屋の号室まで記載する必要はありません。ビル名はしばしば変更されることがあり、変更されるとその度登記の必要が生じてくるため、省略することをお勧めします。また、部屋の号室も会社の規模が小さいと認識されることもあるため、気になる方は省略しても良いでしょう。
Q7.定款とは何ですか。
定款とは、会社の本店所在地や目的、株主総会や取締役の構成など、どのような会社であるのかが定められた規則です。株式会社を設立するためには、必ず定款を作成し、公証人の認証を受けなければなりません。会社設立後には、定款は本店に備え置き、登記申請、許認可や融資を申請する際に行政機関や金融機関などから提示を求められた場合に提出します。
Q8.役員の任期は何年にすればいいですか。
株式に譲渡制限規定がついている会社(非公開会社)であれば、取締役は1~10年、監査役は4~10年の間で自由に設定することができます。ご家族や親族での会社で、役員変更登記費用を節約したい、ということで10年にしている場合があります。ただし、任期満了までに役員を辞めて欲しい時にはたとえ親族であったとしても解任の手続きをしなければなりません。トラブルの予防策として、しばらくは2~4年で様子を見た後、問題がなければ10年にするのがよいでしょう。親族以外の方が役員にいらっしゃる場合は2~4年程度の任期にされることをお勧めします。
Q9.変更の登記をするのを忘れていました。何か罰則がありますか。
登記事項に変更があれば、原則2週間以内に登記をしなければ、管轄裁判所が代表取締役に対して過料を科すという罰則があります。2週間が経過したからといって直ちに過料が科されるわけではないようですが、経過期間が長くなるほど過料が重くなることは間違いありません。変更の登記申請すべき内容の有無は定期的に確認して下さい。
Q10.会社をたたみたいのですが、どのようにすればいいですか。
会社をたたむためには、解散と清算結了の手続きが必要となります。まず、株主総会で解散と清算手続きをする清算人を選任します。そして、選任された清算人が解散の事実を会社所定の方法にて公告し債権者に対して債務の支払いを行うなど、対外的なすべての債権債務を清算します。それが完了した後、解散から2か月という法定期間の経過という要件を満たした後、株主総会において清算結了についての承認を行い、登記をすることで会社が消滅します。ただし、これは一般的な方法で、債務超過である会社などは別の手続きとなりますので、詳しくはご相談ください。
Q11.代表取締役を2人に増やしたいのですが、新たな代表取締役の印鑑を届け出る必要はありますか。
代表取締役を1名から2名に増員したからといって、新たな代表取締役についての印鑑を届け出る必要はありません。ただし、任意で印鑑を届け出ることもできます。その場合は、提出済の代表取締役の印鑑と同一のものは届け出ることはできません。
Q12.私は名前だけを貸して取締役になっています。このままでいいのでしょうか。
会社法施行前に設立した株式会社は必ず3名以上の取締役が必要であったことから、名義だけを貸している取締役もたまに見られます。しかし、もし株式会社が債権者を害する行為などを行った場合には、取締役の責任を追及される恐れがあり、取締役として登記されている以上、名義貸しであることを主張して責任を免れられない可能性もあります。現行の会社法では役員構成によっては取締役1名も可能ですので、事実に沿った退任の手続きを踏まれるとよいでしょう。
Q13.支店を作る予定です。登記する必要はありますか。
一般的に使われている用語としての支店は、会社法上は支店か営業所のどちらかに該当します。支店として扱う場合には登記が必要ですが、営業所として扱う場合は不要です。営業所ではなく支店を選択するメリットとしては、支店所在地の金融機関などから融資が受けられるようになることなどがあげられます。デメリットとしては、支店所在地においても法人税の均等割などが賦課されること、登記費用がかかることなどがあります。
Q14.有限会社から株式会社への移行は必要でしょうか。
有限会社は会社法施行前に設立することができた会社で、現在では設立することができません。 有限会社は現在、特例有限会社と呼ばれて株式会社とほぼ同じ扱いとなっていますが、株式会社よりも小規模と認識されることもあり、その点から株式会社への移行を検討する方もいます。しかし、特例有限会社は税務面での優遇があるなど、株式会社よりも費用面において有利な場合がいくつかあります。これらのメリットとデメリットを比較して株式会社への移行を検討されるのが良いでしょう。
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