相続がおこったときや、遺言書について気になったとき
相続とは亡くなった人の権利や義務を、法律で定められた相続人が受け継ぐというものです。
相続に関する様々な問題については、TVなどのメディアで話題になったり知人から体験談を聞いたりすることも多いと思います。その中には、判断をあやまってしまい、あまり好ましくない結果になってしまったケースがあるでしょう。
ご自身が相続の問題に直面した場合、どのような選択をすることが自分を含め親族にとって最良の結果となるのか、また、相続で失敗をしないためにはどのように対処すればよいのか、日ごろから気にかけておくことが大切です。そして、いざという時のためにしっかりと勉強しておくことが一番の対処法となります。
遺言は、亡くなられた方の最後の意思表示であり、ご自身の財産や権利などを、誰にどのような割合で残すのかを自由に決めるものです。もし、相続人の中に、相続財産を多めに渡したい人がいる、あるいは、相続人以外の方に財産を渡したい、そのような考えをお持ちの場合は遺言書を作成しておかなければなりません。
近年、「終活」という言葉が一般化してきています。人生の終わり方をご自身の意思に沿ったものにしたいのであれば、残された方のためにも遺言書を作成しておきましょう。
Q&A よくあるご相談内容
- 誰が相続人になるのでしょうか。また、相続できる割合はどうなっていますか。
- 亡くなった父には借金があるので、相続したくありません。
- 相続人に行方不明の者がいます。
- 相続人に未成年者がいます。
- 亡くなった父の遺産分割の協議をすることになりましたが、認知症の母がいます。
- 借金を特定の相続人に相続させたいのですが、できますか。
- 遺産分割協議の後で、新たに遺産が見つかりました。
- 遺言書を作った方がいい人は、どのような人ですか。
- 遺言書にはどのような種類がありますか。
- 自筆証書遺言を作る際に気をつけることはありますか。
- 自筆証書遺言のメリット・デメリットを教えてください。
- 公正証書遺言のメリット・デメリットを教えてください。
- 公正証書はどのくらいの費用がかかりますか。
- 認知症の疑いがある場合、本人は公正証書遺言を作ることができますか。
- 遺言書がありますが、遺言どおりに財産を分けたくありません。
- 遺言書を作成しましたが、後で気が変わりました。内容の変更はできますか。
- 遺言書はどこに保管しておけばいいですか。
Q1.誰が相続人になるのでしょうか。また、相続できる割合はどうなっていますか。
誰が相続人になるのかは、すべて法律で決められています。この相続人を法定相続人と言います。
まず、配偶者がいれば、配偶者は必ず相続人となります。そして、子どもがいれば子どもも配偶者とともに相続人となります。子どもがいない場合は代わりに父母が相続人となります。子どもがおらず、また、父母もいない場合は、兄弟姉妹が代わりに相続人となります。配偶者がいない場合は、子ども、父母、兄弟姉妹の順に相続人となります。
相続の割合も同じく法律で定められています。これを法定相続分割合と言います。配偶者と子どもが相続人の場合は、配偶者と子どもが2分の1ずつの割合となります。配偶者と父母が相続人の場合は、配偶者が3分の2、親が3分の1の割合です。そして、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合、配偶者が4分の3で兄弟姉妹が4分の1の割合となります。
しかしながら、仮に相続人全員で合意をした場合は、法定相続分の割合にしばられることなく、自由な割合で分配することができます。この合意を遺産分割協議といいます。
Q2.亡くなった父には借金があるので、相続したくありません。
相続したくない場合は、家庭裁判所に相続放棄の手続きをすることで、亡くなった方の相続人でなくなることができます。
原則として、相続があったことを知った時から3ヶ月以内に手続きをする必要がありますが、相続した後に借金があることを知った場合には、借金があることを知ってから3ヶ月以内であれば、手続きをすることができます。
ちなみに、お父さんに不動産などの財産があった場合はそれらも相続できなくなりますので、相続放棄の手続きを行う際は気を付けて下さい。
Q3.相続人に行方不明の者がいます。
相続人に行方不明の方がいる場合、不在者財産管理人の選任を申し立てて、行方不明の方の代わりに不在者管理人がその他の相続人全員と遺産分割協議をすることになります。
原則として、不在者財産管理人は法定相続分の確保を求めますが、行方不明の方が帰って来る可能性が低い場合には、行方不明の方に遺産を取得させずに、帰って来た時に代償金などを支払う内容の遺産分割協議ができる可能性もあります。
Q4.相続人に未成年者がいます。
相続人が未成年者の場合、その未成年者は遺産分割協議に参加することができません。
そして、未成年者の代わりに法定代理人が遺産分割協議に参加をすることになりますが、この法定代理人も相続人である場合は、公平な判断ができないおそれがあるので、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
そして、未成年者に代わりの特別代理人と他の相続人とで遺産分割協議を行います。
Q5.亡くなった父の遺産分割の協議をすることになりましたが、認知症の母がいます。
認知症を患うと、程度によっては遺産分割協議などの難しい法律判断が出来なくなってしまいます。その状態でお母さんをまじえて遺産分割の協議をしたとしても、協議は無効とされる可能性が高いでしょう。
したがって、成年後見制度を利用して後見人に代わりに協議を行ってもらいます。認知症の程度によっては協議が有効になる可能性もありますが、後々問題になるのを避けるために成年後見制度を利用したほうがいいでしょう。
選ばれた成年後見人も同じく相続人である場合は、公平な判断ができないおそれがあるので、成年後見監督人または特別代理人が代わりに協議に参加することになります。
成年後見制度について詳しく知りたい場合はこちらをご参照下さい。
Q6.借金を特定の相続人に相続させたいのですが、できますか。
借金(債務)は、相続がおこった時に法律で決められた法定相続分に応じて相続人に自動的に相続されることから、借金を誰に負わせるのかを相続人の協議で決めることはできません。
仮に、特定の相続人に借金を相続させるといった協議をしたとしても、その協議で借金を相続しないこととなった相続人が債権者に対して借金を支払わないことを主張することはできません。
Q7.遺産分割協議の後で、新たに遺産が見つかりました。
遺産分割協議書に「その他一切の財産を特定人が承継する」などの記載があれば、その方が相続することになります。
ただし、その遺産の額が大きい場合には、別途協議を経る必要があるでしょう。
Q8.遺言書を作った方がいい人は、どのような人ですか。
まず、ご自身の相続について、法定相続人以外の方に財産をのこしたり、法定相続人の中でも法定相続分割合とは違った分け方にしたいという意思がある方は作る必要があります。また、次のようなケースに当てはまる方も作成を検討された方が良いでしょう。
- 特定の相続人に財産を渡したくない、特定の相続人に財産を多く渡したい
- 相続人以外(内縁関係の相手方、同性のパートナー、子の配偶者、社会福祉法人など)の方に財産を渡したい
- 夫婦間に子どもがいない
- 前妻と後妻との間にそれぞれ子どもがいる
- 事業を営んでいる
- 財産の多くが不動産である
- 相続人に認知症の方がいる
Q9.遺言書にはどのような種類がありますか。
遺言には一般的に利用されるもので、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類に大別されます。
「自筆証書遺言」とは、その名称のとおり全文をご自身で書いて作成します。日付や氏名を書き、印鑑を押すなど、法律で定められた要件を全て満たすことで成立する遺言書です。
「公正証書遺言」とは、公証人が遺言者の意志を元に文面を作成し、遺言者の目の前で遺言書を読み上げ、証人2名が立ち会うことにより成立する遺言書です。作成場所は原則として公証役場ですが、ご自宅や入院先の病院での作成も可能です。
なお、どちらの方法で作成したとしても効力は同じです。
Q10.自筆証書遺言を作る際に気をつけることはありますか。
自筆証書遺言には、形式的な要件が5つあります。
- 全文を遺言者が自分で書くこと
- 日付が書いてあること
- 氏名が書いてあること
- 印鑑を押していること
- 文章に修正がある場合、定められた方法でなされていること。
これらのうち1つでも要件が欠けている場合は、遺言は無効となりますので、ご注意下さい。
Q11.自筆証書遺言のメリット・デメリットを教えてください。
メリットとして、公正証書遺言と異なり費用がかからない点が第一にあげられます。また、お一人で作成することができるので、気軽に作ることができます。
デメリットとしては、決められた要件を1つでも欠いた場合、遺言は無効になります。そして、公証人などの専門家のチェックが無いため、作成した時に本人に意思能力があったのか、また遺言書に書かれている内容の解釈について、後々問題になるケースが公正証書遺言と比べて多いこと、などがあげられます。
Q12.公正証書遺言のメリット・デメリットを教えてください。
メリットとして、公証人などが立ち会っているため作成した時の意思能力について問題になる可能性が低いこと、自筆遺言証書に必要な検認と言われる手続きが不要となるので相続後の手続きが簡単であること、公証役場で原本が保管されるので偽造や変造の恐れがないこと、などがあげられます。
デメリットとしては、作成に費用がかかる点や手間がかかる、などがあげられます。
Q13.公正証書はどのくらいの費用がかかりますか。
公正証書遺言の費用として、まず公証人の手数料があります。これは、財産の額や承継する人の数、公証人の出張の有無などによって変動しますが、目安として3000万円の財産を1人に承継させる場合は約3~4万円です。
また、司法書士などの専門家に文案の構成や証人の手配などご依頼頂く場合は、別途費用(弊所においては約10万円~)が必要となります。
Q14.認知症の疑いがある場合、本人は公正証書遺言を作ることができますか。
程度によりますが、一般的に認知症の方は作成が難しいです。遺言を作成するためには15歳ほどの意思能力、判断能力が必要とされているためです。ただし、症状が軽く公証人が作成可能と判断した場合は、作ることができるケースもありますので、詳しくはご相談ください。
Q15.遺言書がありますが、遺言どおりに財産を分けたくありません。
遺言書があっても相続人全員の合意があれば、遺産分割協議をして遺言とは異なる内容で財産を分けることが可能です。
ただし、遺言執行者が選任されている場合は、それに至った経緯や要望などを伝えて了解を得ておく必要はあると考えます。
Q16.遺言書を作成しましたが、後で気が変わりました。内容の変更はできますか。
はい、遺言書は何度でも書き直すことができます。最新の遺言書の内容が優先されます。
一年間で状況が一気に変わることはめずらしくありません。定期的に現状にあわせた遺言書に書き換えてもいいでしょう。
なお、はじめに作成した遺言書と、書き直した遺言書の種類は同じでなくても構いません。
Q17.遺言書はどこに保管しておけばいいですか。
遺言書は、相続が発生した後に発見されなければ、遺言者の望みどおりの結果にならないため、ご自身の死後に見つけてもらえる場所に保管しておかなければなりません。
しかし、自筆証書遺言の場合は、自分に都合が悪い内容であると感じた第三者に隠されたり書きかえられたりする事例もあるため、日常生活で目につく場所は適切とは言えません。
したがって、銀行の貸金庫やご自宅の金庫など、他の重要な書類と一緒に保管しておくのがよいでしょう。
ちなみに、公正証書遺言は原本が公証役場で保管されるため、書きかえられる心配はありません。
さらに詳しく知りたい方は、お気軽に お問い合わせページからご連絡ください。